新型コロナウイルス感染症対応下での教育現場における非常勤講師・兼任講師の意見・要望

【大学・高等専門学校】

※中学校・高等学校・中等教育学校、高大共通の意見・要望についてはこちらをご覧ください。


2020年4月22日、日本歴史学協会若手研究者問題特別委員会は「新型コロナウイルス感染症対応下での教育現場における非常勤講師・兼任講師への適切な配慮と対応を求めます(呼びかけ)」を本会ホームページ上で公開し、文部科学省に通知しました。

あわせて教育機関に勤める非常勤講師・兼任講師の方々に、この問題についてのご意見・ご要望を募り、本会ホームページに掲載することで関係機関に周知する取り組みを行っています。

・受付フォームのURLは>>こちら

・電子メールでの投稿は nichirekikyowakate@gmail.com

5月27日の更新以降、新着順に整理し、本ホームページに掲載します。


【2020年7月8日更新】

1 文科省・政府への意見・要望

生活基盤に関すること――経産省の持続化給付金について

非常勤講師をしておりますが、今回の持続化給付金の対象の学校との契約事項が業務委託契約となっております。私は学校との雇用契約になっているため申請できません。

しかし、学校との契約は一般的な雇用契約とは違い、社会保障も退職金も残業代も年次有給もありません。やはり一般企業とは違うので非常勤講師にも配慮した国の配慮が欲しいところです。

とても不公平感を感じます。

【2020年6月5日更新】

1 大学への意見・要望

教育環境等に関すること、学校運営に関すること

歴史学の非常勤講師ではありませんが、ある県の公立大学で語学系の非常勤講師をしております。

全ての授業がon-lineになり、アップ用の授業資料作成に課題のチェックとフィードバック、学生の質問への対応など、対面授業時より何倍も手間と時間がかかっているのが現状です。正直疲弊しています。

学校側は非常勤講師にすべて任せっきりで何のサポートもありません。授業に必要なものは勿論自腹で、請求するつもりもないのですが、on-line授業化で分からないことがあって問い合わせても返信すら頂けません。その上、非常勤講師がon-line化により、家でサボっているとでも思っているのか、「授業実施報告書」の提出まで求められました。いつ、どんな形の、双方向性の授業になったことを証明できる物を添付しなさいとか、課題はどんな課題を出したかまで詳細の報告をしなければなりません。

一日中パソコン作業で、右肩から手頸まで痛みが生じ、正直今も辛いです。

大学側は、on-line授業化による非常勤講師の立場なんかは眼中にもないのが現状です。この「授業実施報告書」を求められた際は本当に呆れました。

大学の非常勤講師は只泣き寝入りするしかないでしょうか。

【2020年5月27日更新】

1 大学への意見・要望

教育環境等に関すること、学校運営に関すること

現在首都圏の五校で非常勤で働いているが、各大学が学内の教育システムについて独自のプラットフォームを使っている。平常時でも使いこなすことが難しい。それを、急なオンライン化で更に授業運営の中心において使いこなすことを求めている。

常任教員は一つのシステムを使いこなすだけで良いのだろうが、複数の大学で勤務している者には非常に複雑で、時間をとられる作業である。そして、同じく学内システムに混乱した学生から、平常よりはるかに多い量の不満が講師に直接とどき、更に業務が増えてストレスも多い。100人以上の受講生がいる授業でも「資料をダウンロードできない」などの学生の個人的なトラブルに対して、一人ひとりへの対処をなさなければならない。

非常勤講師は時間で換算すれば東京都の最低賃金などはるか下回る賃金で膨大な量の仕事をこなさなければならない。過重労働に体調を壊して休講としたくても、休講措置すら「かならず一週間前までに学内システムを通じて申請」などの、事態を理解していないとしか思えないことを定めている大学もある。(複数)

この事態を「みんなで乗り切ろう」という耳に聞こえの良い言葉を発している大学も多いが、乗り越えるならば、

1.賃金保障を宣言した上で、授業運営について非常勤講師に選択させること、

2.平常時より増えた業務に対して、時間外賃金を支払うこと、

3.業務の改善にあたって大学側が機材の購入を負担すること(オンライン授業が終われば大学側が必要なら査収してよい)、

4.事務・学務の非常勤講師向け受付要員を設置すること

を要求したい。

2 文科省・政府、メディア、地方行政(市町村)への意見・要望

生活基盤に関すること、子育てに関して

現在、幼児を保育園に通わせながら、大学の助手・非常勤講師をしています。新型コロナウィルスの影響で、大学の業務は在宅勤務となり、講義はオンライン授業となっています。しかし、保育園の利用については、4月の時点から在宅勤務の者については「登園自粛」が保育園から独自に要請されており、預け先はありません。このような状況で、給与と契約更新の心配から辞めることはできず、オンライン授業に臨んでいます。

メディアや子育てに関わる団体や地方自治体には「在宅勤務であっても子どもを預けることが必要な職種」について理解が不十分だと感じていますし、今後も今回のように政府が子育て世代に対して無策の中で、子育てしながら代わりのいない立場で働くことには不安を覚えます。休園・休校措置の前に、子どもの保育環境をなんらかの形で確保してほしいと思います。

【2020年5月13日更新】

1 大学、文科省・政府への意見・要望

教育環境等、学校運営に関すること

オンライン授業の実施により、その準備のために多くの時間を費やしているにもかかわらず、非常勤講師の手当(謝金や給与)を減額する動きがみられるが、従来通りの金額を支給するよう求めます。

【2020年5月6日更新】

1 大学への意見・要望

教育環境等に関すること

非常勤講師を何校も掛け持ちしているが、学校ごとに使っているシステムが異なったり、望まれるオンライン講義の方法が異なっていたりと対応に苦労している。

生活基盤に関すること

授業準備に割く時間が大幅に増加しており、さらに講義用に揃えなければならない機器を考えると、今の非常勤の給料では割に合わない。何らかの特別手当がほしい。

【2020年4月23日更新】

1 文科省・政府への意見・要望

学校運営に関すること

運営交付金・私学助成を増やしてほしい。自宅にネット環境がない学生の学ぶ権利を確保したり、図書館の代替措置としての電子ジャーナル、LMSの強化等から、とにかく設備投資が必要とされています。教育機関へお金をかけて下さい。

2 大学への意見・要望

教育環境等に関すること

授業開始にあたり、受講生がどの程度オンライン授業を受けられ、通信環境や印刷環境が整っているかを知らされていないため、円滑に実施できない。事前に大学側が調査するなどの対応をお願いしたい。


自分の研究室もなく、図書館が使えず調べものもできない。


学生にレポートを書かせる為に図書館を使ってもらうことができません。電子ジャーナル等の契約を増やしてほしい。

生活基盤に関すること

大学図書館や地域の公共図書館が閉まっている為、授業準備の為に資料を集めることができません。資料を自分で購入することになる為、教材費として、給与とは別に手当をつけてほしい。


今後、教養系の科目が専任教員のオンライン講義でこと足りるとして、非常勤のカットという流れにならないか危惧している。

3 大学、文科省・政府への意見・要望

教育環境等、学校運営に関すること

オンライン授業の方針もシステムも大学ごとに異なるため、非常に難儀しています。本務校のシステムにだけ慣れればよい専任教員と、各大学のシステムに対応しなければならない非常勤講師と、どちらが「ハードモード」か、すぐに分かるかと思います。さらに言えば、そのハードモードをクリアしたところで、得られる報酬は専任教員の数分の一。「無理ゲー」にも程があります。

4 大学、学会・学界への意見・要望

教育環境等に関すること

休校・図書館利用停止・キャンパス閉鎖という事態において、図書、論文誌、報告書等へのアクセスがきわめて制限される状態です。学生の教育に甚大な影響を与えることは間違いありません。史資料のオープン化(オープンアクセス、オープンデータ)への取り組みがきわめて不十分であったことを受け止め、現状および今後への対応のために真摯に議論し、速やかに対策を提言してください。

【2020年4月22日までの受付分】

1 文部科学省への意見・要望

これは大学を越えた問題ですので、非常勤講師が今後も大学教育に携わり続けられるように、文部科学省が 全大学に、非常勤講師の休業時の賃金補償を要望することが望ましいと考えます。


例えば、change.org では、「非常勤講師に賃金保障を!」という署名が行われ、6200人以上が賛同しています。その結果を受け発信者の Nakayama Yoshikoさんが、内閣総理大臣、文部科学大臣、厚生労働大臣に以下の4点をまとめた要望を提出するとのことです。私もこれらの要望に賛同します。

(1)休業における賃金補償をおこなうこと(予定されていた時期の給与の支払いも求めます)

(2)契約打ち切りに対する制限をおこなうこと(仕事を失った場合の全額補償も求めます)

(3)遠隔授業対応への手当て

(4)新型コロナウイルス罹患時(うたがいも含む)の賃金補償

日歴協も、このような動きに賛同し、各所に要望を出していただけると大変ありがたいです。


文部科学省は早急に実態を集約し、一律に毎月三〇万円の援助金を配布するようにもとめます。生活費のみでなく、図書館、大学の利用不可能などの中で研究条件に様々な支障が出ます。それをふくめた相当の補償がなくては研究条件を維持できないと思います。そもそも非常勤講師を御願いして教育の一定部分を依存するのがおかしいことですが、少なくとも、このような手当無しには、研究者としての生き方、そして教育体制も頓挫してしまいます。 外出自制に協力する以上、相当の補償を求めます。


すでに準備のため契約時間以上の不払い労働を強いられているのですから、当初契約どおりの時間分の休業補償は最小限なされなくてはなりません。その上で少なくとも半期後に再開できるなら、あらためて当初の条件で、あるいは遠隔講義を前提とした条件で再契約してしかるべきと考えられます。学生には、休業期間中の学費を当然免除すべきであることは言うまでもありません。


カリキュラムおよび教学保証が大学教育の根幹であるなら、教育研究の基盤を提供できない以上、中途半端な対処で右往左往するのではなく、少なくとも半期はすべての学年を遅らせる等、より踏み込んだ対処をまず考えなくてはならないのではないでしょうか。


文科省がきちんと大学入試の共通試験を少なくとも半年は延期する、大学を再開できるかどうかは感染症の流行と医療体制の余力をみて半期毎に見直し、科学的な根拠にもとづき数ヶ月前には必ず通知するとして、はじめて受験生も親御さんも混乱することなく、小中高校も安心して休むことができるのです。(その上でさらに在学生とくに新入生、そして小中学校の子どもたちへの配慮は欠かせません)

2 文部科学省・経済界・学協会への要望

・文科省には大学がいま本来の使命を果たせる状況にないことをみとめて、ただでさえ受験生を不安にさせている共通試験の実施を少なくとも半期は延期すること、経済界には次年度新卒者の採用にあたり柔軟な対応をとるよう申し入れを行うこと、かつ可能な限り早期にこれらの決定を表明するように、つよく学協会からの働きかけを求めたいと思います。

3 収入面への不安

やはり1番の心配なのは収入です。各月のコマ数に対して支給してくれる大学では、前期休講となれば収入が絶たれると思うので、不安です。


最も不安に感じているのは賃金に関することです。多くの大学では4月に授業が開講されないなど、授業期間が通常の年度よりも短縮されています。また、今後状況が悪化すれば、5月以降も休講が続く大学が出てくる可能性も考えられます。そのような場合に、休講期間の賃金が出るかどうかは、専業非常勤講師にとっては死活問題になります。非常勤講師の賃金は低く、貯蓄をすることも難しいため、収入が途切れる月が出ると、短期間でも生活が維持できなくなる講師は少なくないと思われます。

遠隔授業対応への不安

ウェブ講義ないしは録画で対応して欲しいとなったときに、手元の機材で間に合うのかどうか、間に合わなかった際に大学側が補助してくれるのか。


ライブで講義をする場合、もし技術的なトラブルが発生した場合、どのようなサポートをしてもらえるのかがわからない。事務も在宅勤務になっており、その点が不安。


自宅からの配信に耐えられるPCとネット環境が無い場合、大学まで行って対応せざるをえないが、研究室の無い非常勤の場合、どこで配信や録音録画などをすればよいのかわからない。また、緊急事態宣言の中でも大学に行かざるをえなくなる可能性がある。


いま無理矢理すべての講義をオンライン化してのりきれると考えるのは、絶対に間違えています。そもそも非常勤当該および学生全員の通信条件、それに各大学の情報機器および通信インフラのキャパシティとコストを、きちんと見込んでいるとは思えません。


いま専任の先生方の相当数が、おそらくは春休み中の会議経験から、これまでの対面方式の講義を遠隔会議システム等の動画による双方向通信で代替する用意をされているように見受けられます。このままでは、5月に東西の主たる大学が一斉に大講義をはじめるとき、インターネットの国内トラフィックはかつてない規模に増大しても不思議ではありません。これほどまで大規模な移行をテストもなしに実施するのは、通常では考えられない無謀なことです。

事実、早速4月初旬に新学期をはじめた東京大学や立命館大学では、定員の相当数がアクセスしただけで認証システム等の処理能力を超えたことが報道されました。認証システムが動かなければ、受講登録・出欠・成績その他の連動した教学システムも信頼できないばかりか、学籍メールでさえ即時性・確実性を担保することはできません。またNII提供の学認シボレスが動いていても、各大学で一元化された認証サーバそのものが応答しなければ、eduroamでさえ利用できません。また、ボトルネックは学内システムだけの問題ではないのです。

国内バックボーンのキャパシティが限界に至るとき、いうまでもなく各所で通信障害が頻発するのみならず、大手通信キャリアはまず格安MVNO事業者等への割当帯域から削減する可能性がたかく、支払える価格による通信格差が露呈するに違いありません。大なり小なり必ず、教育の機会均等に反する帰結を招くことになります。

連絡の遅れ、不備への不安

どうしても非常勤への連絡は遅くなってしまうようで、大学によっては先行きがなかなか見えてこない。


どの大学もそうですが、とくに国立教育大学は対面方式にこだわる点も理解できなくはないものの、非常勤講師への通知は五月雨式で度重なる状況判断の変化に翻弄されています。また学生に対する配慮の点から考えても、現在実質的に大学の機能を喪失したまま、無理な再開に踏み切るのはよくないと感じています。

不利益変更の恐れ

非常勤講師には、急遽シラバスの書き換え等の対処を求められています。これらは大学により半年から数ヶ月前には提出済みで、勤務場所・実施方法とも契約済の労働条件の一方的な不利益変更に他なりません。しかも遠隔講義を前提として講義計画を書きなおすことは、一から講義を作りなおす(一冊の教科書を書き下ろす)ことに相当します。

研究・教育施設の利用についての不安

ついに国会図書館まで遠隔複写サービスの受付を停止しました。特任講師としての所属大学では、まだ学内者向けの貸出のみ配慮してくれていますが、事実上すべての図書館が機能停止、緊急事態宣言に基づく休業要請の行われた自治体では、入構規制がしかれ構内での研究活動を制限、実験系にも不可欠な機器設備さえ利用できない事態になっています。

その他

今回、若手研究者問題についての意見集約ということで、私も少しばかり意見発信したいと思いました。

私はすでに非常勤講師を16年ほどやっています。親から引き継いだ事業の他に臨時の講師アルバイトの経験もありますが、年数を重ねた割には日々の雑用に忙殺され、研究時間の確保は難しい状態です。いずれの職も労力の割には収入が少なく、海外への渡航資金が捻出できない状態です。さらに家庭を築くことも難しい状態です。私の大学院時代に、博士課程を目指す他大学の研究候補生たちと交流したことがありますが、彼らのほとんどが生活基盤の確立に難儀しているということでした。そこで親しくしていた人は、研究者としての道に見切りをつけて、民間企業の雑用係のような仕事に就いたと話していました。

今回の新型コロナウイルスの対応では、多くの研究者を目指す若手の方には、収入源のご心配があるかと思います。私のようにこれだけ長く研究者としての安定基盤を目指してがんばってきたつもりですが、その活動はいまだに報われてはいません。その原因には、社会全体が研究活動に無理解であり、さらに歴史学は理系研究と異なるため、企業利益にも直結しないこともあり、今後、一層難しさを増すかと思われます。最近まで知人にも若手の研究者がいましたが、当人は収入源が得られないことから研究者の道を断念し、ひとまずは公務員などの仕事に就いたとの連絡をもらっています。

これから研究者を目指す人は、研究だけで生活していくのは難しいので、民間企業への就職が妥当ではないかと思われます。非常勤講師が今回のコロナウイルスの件で多くの人が雇止めにあっていると聞きます。ここまで続けられてきた自分は、兼業で持ちこたえたので、まだ幸運な方だったと思います。現況を見るにつけ、日本の学術研究は崩壊に向かっているのではないかと思われます。研究に行き詰まり、自殺者も出るような情勢です。本当の地獄が来る前に、研究者各自の生活基盤の安定策を優先することをお勧めします。