内閣府は、去る二〇二二年十二月六日、「日本学術会議の在り方についての方針」(以下、方針)を公表し、あわせて来たる一月二十三日に召集される通常国会において日本学術会議の「改革」に関連する法案を提出する意向を示している。これに対し、日本学術会議は、十二月二十一日に開催された第一八六回総会において声明(「内閣府「日本学術会議の在り方についての方針」(令和四年十二月六日)について再考を求めます」)を採択し、同声明のなかで、左の六点の懸念事項を掲げている。
一 そもそも、すでに学術会議が独自に改革を進めているもとで、法改正を必要とすることの理由(立法事実)が示されていない点
二 会員選考のルールや過程への第三者委員会の関与が提起されており、学術会議の自律的かつ独立した会員選考への介入のおそれのある点
三 また、第三者委員会による会員選考への関与は、任命拒否の正統化につながりかねない点
四 現在、説明責任を果たしつつ厳正に行うことを旨とした新たな方式により会員選考が進められているにもかかわらず、改正法による会員選考を行うこととされ、そのために現会員の任期調整が提示されている点
五 現行の三部制に代えて四部制が唐突に提起されたが、これは学問の体系に即した内発的論理によらない政治的・行政的判断による組織編成の提案であり、学術会議の独立性が侵害されるおそれが多分にあることを示した点
六 政府等との協力の必要性は重要な事項であるが、同時に、学術には政治や経済とは異なる固有の論理があり、「政府等と問題意識や時間軸等を共有」できない場合があることが考慮されていない点
私たち日本歴史学協会は、かつて超国家主義や軍国主義によって学問・研究の自由やその学問としての存立を脅かされた痛恨の過去を有する歴史学の研究者から構成される学術団体として、今般の内閣府の方針に対し、日本学術会議が示した右の六つの懸念事項と同様の危惧を強く抱かざるを得ない。
したがって、私たち日本歴史学協会は、日本学術会議が総会で採択した声明に全面的に賛同するとともに、内閣府においては、同声明で示された日本学術会議の意向を踏まえて方針を見直すとともに、日本学術会議の性格の大きな変容につながる法案を拙速に来たる通常国会に提出することのないよう強く求めるものである。
二〇二三年一月七日
日本歴史学協会