本日10月4日、国会において、岸田文雄氏が内閣総理大臣に指名された。
私たち日本歴史学協会は、新内閣の発足にあたり、昨年10月、日本学術会議第25期の活動が開始される際に日本学術会議が推薦した会員候補105名のうち、菅義偉前首相が任命を拒否した6名の研究者(日本近代史を専攻する歴史学者1名を含む)を、日本学術会議の会員に速やかに任命するよう強く求めるものである。
改めて指摘するまでもなく、日本学術会議法第七条第二項に「会員は、第十七条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する。」とあり、第十七条には「日本学術会議は、規則で定めるところにより、優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考し、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣に推薦するものとする。」とあることから、日本学術会議の会員の任命にあたっては、何よりも日本学術会議の推薦が尊重され、内閣総理大臣の任命は形式的なものであることは明らかである。岸田首相は、菅前首相の誤りを正し、直ちに6名の研究者を任命すべきである。
また、この間、菅前首相が6名の研究者を任命拒否した理由を、一切明らかにしてこなかったことも問題である。すでに6名の研究者は内閣府と内閣官房に対し任命拒否の理由や経緯がわかる文書の開示を求めたものの、いずれも開示しないとする決定が出されており、そのため国の処分の取り消しを求める不服審査請求がなされているところである。岸田首相は、速やかに6名の研究者が求めた任命拒否の理由や経緯がわかる文書の開示も行い、菅前首相による任命拒否の理由と背景を明らかにすべきである。
菅前首相が行った日本学術会議の会員任命拒否は法律違反であり、ひいては日本国憲法で保障された学問の自由を侵害するものに他ならず、また、日本学術会議が推薦した会員が任命を拒否され、法で定められた会員に欠員が生じているのは異常な事態である。岸田首相に対し、改めて、速やかに6名の研究者を日本学術会議会員に任命し、あわせて、菅前首相の任命拒否の理由や経緯を開示することを強く求めるものである。
2021年10月4日
日本歴史学協会 委員長 若尾政希
同 学問思想の自由・建国記念の日問題特別委員会 委員長 横山百合子