豪雨による被災文化財や歴史資料等の救済・保全についての緊急声明

2019年8月から10月にかけての大型台風と低気圧の通過、前線の停滞による風水害の発生、とりわけ10月12日の台風19号にともなう豪雨によって、各地で河川の氾濫、破堤による洪水が発生し、大災害が引き起こされました。この一連の災害によって犠牲になられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災地の皆様には心よりお見舞い申し上げ、一日も早い復旧・復興をお祈りいたします。

この度の風水害による甚大な被害のうちには、文化財や歴史資料等も多分に含まれ、それらの収蔵施設の被害も発生しています。また、今後復旧・復興が進むなかで、被災した文化財や歴史資料等が滅失・流出することも危倶されます。こうしたなか、千曲川の氾濫により大きな被害を受けた長野県で「信州資料ネット」が設立されるなど、各地で被災資料の救済・保全活動が始まっていますが、被災地域が広域であるために手が回らず、十分な救済・保全が難しいのが現状です。このような状況に対し、歴史学関係諸学会の連合組織である日本歴史学協会は、歴史学関係者をはじめ広く皆様に対し、被災資料のレスキュー活動を始め、文化財・歴史資料等の保全・保存活動への積極的な参加・協力を呼びかけます。

地震・火山噴火のみならず、近年はこれまで想定できなかったような豪雨などによる大災害が、絶え間なく私たちを襲ってきています。こうした現状に鑑みると、これまでの文化財や歴史資料等の保全・保存の在り方について、大災害の続発を前提に見直す必要性を痛感いたします。こうした問題に私たちは、関係諸機関・団体等と連携して真摯に取り組んで参ります。あわせて、国や自治体に対しては、平時からの文化財や歴史資料等の所在把握と管理体制の強化に加え、緊急時における速やかな対応と救済・保全に向けた更なる取り組みをはかるよう要請いたします。

2019年11月16日

日本歴史学協会
会長 中野達哉